研究概要 |
高温環境劣化割れのリアルタイム検出とメカニズムの解明を行うため,弾性波動(AE,Acoustic Emission)の誘起する面外変位を計測できる耐熱AEセンサーを開発し,その特性を評価するとともに,波動減衰を考慮した原波形解析法を構築した。耐熱センサーとしては,物理気相蒸着法で堆積した非晶質アルミナセンサー皮膜を静電容量膜とするセンサー,キューリ-点の高いニオブ酸リチウム圧電素子を用いるコニカル型センサーを試作し,それらのセンサー特性を明らかにした。その結果,静電容量センサーは広周波数帯域を持ち,正確に面外変位を測定するが,感度はコニカルセンサーの約1/10程度であることが判った。また,70V程度の直流バイアス電圧が必要で,他のセンサーにノイズを与えるためマルチチャンネル化ができないという問題があった。そこで,ノイズを削減し,かつ感度をあげるためLiNbo3素子を用いた耐熱センサーを試作した。このセンサーは,直径を25mm程度まで減少することができ,600Cまでならば面外変位を感度よく測定でき,実用化できることが判った。開発したこれらのセンサーを用いて高温での波動減衰や速度分散を測定し,これらを考慮した新しいAE原波形解析法を確立した。これにより,センサー装着場所の温度が600C以下ならば,実装置(例えば水添脱硫装置)の高温耐圧試験や運転中のモニターリングと,亀裂のダイナミックスの解析に実用化できる。この成果は高く評価されるべきである。実験室試験としては,オーステナイト系ステンレス鋼の高溶浴融塩化物割れ、溶融銀ろうによる割れのモニターに使用した。その結果,高速破壊によるAEを頻繁に検出した。また,減衰を考慮したAE原波形解析を行った結果,一から数結晶粒サイズの粒界割れが数マイクロ秒に発生していることを初めて明らかにした。高速破壊のメカニズムについては十分には解明できなかったが,有害物質による粒界凝集力の低下,粒界予溶融などの可能性を指摘した。コニカルセンサーは,現在高温超塑性におけるキャビティーや微小破壊のリアルタイム検出という新しい研究展開に活用されている。今後,更なる小型化を行ってマルチチャンネルで用いることができれば,破壊の位置とダイナミックスが解明できる段階にある。
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