研究概要 |
下記の実験によって臨界電流密度の電気化学的意味の統括的な検証を行った。 (1)水素析出の触媒として作用し,最小水素過電圧(η^0_H)を減じることが知られているSCN^-,S_2O_3^<2->のようなS^-,N^-化合物を電解浴に添加し,臨界電流密度を測定した。その結果,浴中のS^-,N^-化合物の濃度が高くなる程,臨界電流密度が上昇することが分かった。また,Znイオンを含有しない浴でこのη^0_Hの減少効果を確認し,硫酸亜鉛浴で測定した臨界電流密度とη^0_Hの関係を求めた。両者は反比例の関係になり,仮定された機構が立証できた。 (2)η^<inh>_Hが出現しないクエン酸浴やアンモニア性アルカリ浴を用い,η^0_Hが異なる金属電極において臨界電流密度を測定した。その結果,臨界電流密度は電極金属の種類によらず,水素の限界電流密度に等しくなった。 (3)Znと同様水素より卑な金属であるCdおよびMnについてZnと同様な実験を行った。その結果,Mn電析の臨界電流密度は水素の限界電流密度に等しくなり,水素イオンの拡散過電圧に支配されることが分かった。また,Cd電析の臨界電流密度は水素の限界電流密度より小さくなり,臨界電流密度において陰極界面pHはCd(OH)_2生成の臨界pHまで上昇していないことが分かった。 (4)多量の第二元素イオン(Cd,Mn)を含有した硫酸塩浴におけるZn電析の臨界電流密度を測定し,臨界電流密度以下で第二元素の電析電流密度が無視できない状況で,第二元素が高電流効率で電析し水素析出の部分電流密度を減少させるのか検証した。その結果,Znより貴なCdは電析して臨界電流密度を上昇させ,Znより卑なMnは電析しないため,臨界電流密度を変化させないことが分かった。
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