研究概要 |
平均構造を有するリチウムイオン伝導体Li_3M_2(PO_4)_3(M=ScおよびIn)の高温相の超イオン伝導相の室温での安定化と超イオン伝導相の発現に有効な構造に関する基本的な知見を得ることを目的として研究を行った。各々のイオン伝導体は、固相反応により合成した。熱分析は、0.05を超えるxのLi_<3+2X>(Sc_<1-X>Mg_X)_2(PO_4)_3、Li_<3-2X>(Sc_<1-X>A_X)_2(PO_4)_3(A=Ti,Zr,Sn,Hf)および0.025を超えるxのLi_<3-4X>(Sc_<1-X>A_X)_2(PO_4)_3(A=Nb,Ta)において相転移が存在しないことを示していた。TiおよびZr置換において観察された最も高い伝導度は、Li_3Sc_2(PO_4)_3の室温のイオン伝導度より三桁増大している。粉末中性子回折パターンのRietveld解析により決定した結晶構造より、Li_3Sc_2(PO_4)_3の高温相と安定化された化合物が同一の構造を持っていることが確認された。また、リチウムイオンが結晶格子中において統計的に分布し、それにより高温相の安定化が起きていることが明らかになった。これは、超イオン伝導相の発現機構の解明に寄与する重要な知見である。これらの安定化された化合物は化学的に非常に安定であり、全固体型リチウム二次電池用の固体電解質やセンサー材料等への応用が期待される。 また上述の知見より、Li_3M_2(PO_4)_3(M=ScおよびIn)と同じ構造を持つリチウムバナジウムリン酸塩Li_3V_2(PO_4)_3の高温相の安定化を試みた。10%のZrの置換によりLi_3M_2(PO_4)_3(M=ScおよびIn)と同様な高温相の安定化が起きることが確認された。この化合物をリチウム二次電池の正極材料として用いた場合に、リチウムの拡散性の向上による充放電容量(約1.2倍)の顕著な改善が見られた。すなわち、異種カチオンによる高温相の安定化が、これらの系において共通に用いられることができる有効な手法であることを確認した。
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