研究概要 |
本研究は遷移金属錯体を触媒とした炭素-炭素結合形成のための新反応開発を目的とした。そのため、i)有機化合物への一酸化炭素の直接取り込み、ii)中性条件下での炭素環骨格形成手法の確立に焦点を絞った。そこで、まずアセチレン性三重結合の触媒的活性化の具体的なバロメーターとなるシリルホルミル化に関して詳細に検討した。その結果、この反応にはロジウム錯体の存在が必須であること、またロジウム錯体へのヒドロシランの酸化的付加が触媒サイクルの出発点であることが明らかとなった。更に、この知見に基づいて検討した結果、内部アセチレンに対するシリルホルミル化の完全な位置制御法を提出することができた。一方、アルキニルアミンおよびアルキノール類を出発基質とした場合には触媒量のジアザビシクロウンデセン(DBU)を添加するだけで、ラクタム環およびラクトン環形成が実現できた。引き続くモデル実験から、この手法で形成できるのは4〜8員環ラクタムおよび4〜7員環ラクトンであることを明らかにした。 次いで、1,6-ヘプタジイン誘導体をモデルとすると、ロジウム錯体存在下で、ヒドロシラン、一酸化炭素を反応させるだけで、ビシクロ[3.3.0]オクテノン骨格を一挙に形成できることを見出し、実際に、4,4-ジメチル-3-トリメチルシロキシヘプター1,6-ジインに適用して得られる主生成物が容易にコリオリンへと誘導できることを示した。また、1,6-ヘプタジイン誘導体はロジウム錯体存在下で、ヒドロシランと反応させると、きわめて容易に1,2-ビスメチレンシクロペンタン骨格が形成できることを見出した。以上のように、本研究ではアセチレン性三重結合を利用した炭素-炭素結合形成における新規概念の掘り起こしに成功した。
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