研究概要 |
本研究は,N-アルキル-O-(2-アルケニル)ヒドロキシルアミン(1)のテトラヒドロフラン溶液に0℃でn-ブチルリチウムを作用させると,速やかに転位反応が進行してアリルアミンが生成することをはじめて明らかにした。これは,陰電荷を有する窒素原子を転位末端とする前例の無い[2,3]Wittig型転位反応である。更に,基質の構造に依存するが,塩基を用いることなくジメチルホルムアミド溶媒中で加熱(60℃)するだけで転位反応が速やかに進行する場合もあることも確認した。転位基質である1は,ヒドロキシルアミンのN,O-二元求核反応剤としての特性を活用して,アリルアルコールから容易に調製できる。すなわち,N-ヒドロキシフタルイミドを求核反応剤とする光延反応,アミノ基の再生,及びN-ベンジル化の一連の反応を行えば1が容易に調製出来る。転位反応が進行するためには,窒素上にはベンジル基あるいはアルキル基が必要で,電子吸引性基が導入されると反応は進行せず基質が定量的に回収される。本転位反応の適応範囲と限界を系統的に検討した結果,生物的に重要な種類のアリルアミンの立体選択的合成法として大いに資するものであることを明らかにした。加えて,本転位反応は,1,2-および1,3-不斉誘起を含むジアステレオ選択的なシステムに応用可能で,キラルなアミノポリオールの合成法としても有用であることを明らかにした。また,キラルなジアザ配位子を共存させれば,反応剤制御型エナンチオ選択的[2,3]シグマトロピィ転位が実現出来ることも明らかにした。
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