研究概要 |
直接的所得補償が今後の山村の存立にとって不可欠の手段であると考える.その理由は第1に,国が直接的に政策に関与することに意味がある.山村は生産面,環境面で社会的共通資本としてとらえることが妥当で,そのために国民的コンセンサスを得るために国の直接の関与が必要である.第2に,山村への支援の方法としては,様々な方法が考えられるが,いずれもが,直接的・短期的な成果そして想定された特定部門での成果を生み出すことを期待している.直接的所得補償では,対象範囲を限定するが,実際の用途は部門を限定したものでなく,追加的支出の全ての部門に回せ、その意味でより広範な部門をカバーし,資源管理や定住への誘因につながる。条件不利地域に対する支援は,現状の経済的格差を政策的根拠とするのではなく,その原因である地理的条件の不利性を根拠として考える必要がある. 山村住民は山村に定住するために様々な追加的費用を支払い、それが負担感を形成している。この負担感を取り除く形での農林業生産費の格差の補填,生活費の補填という直接的補償は最も効果的である。 直接的所得補償の意味は,農山村地域に住む人々の定住や生産に対する誘因を内発的に刺激するものでなければならない.これに対して農山村地域以外の都市などの川下側の論理で農山村における農林業生産あるいは人々の定住が継続されることが環境保全上望ましいという立場では,農山村住民のコンセンサスは得られないであろう.直接的所得補償政策は様々な視点から複合的な意義のもとで実施されるべき政策であり,その中でも地域住民からみて,経済的な負担感なく定住し生産を続けられるような方法により補償を検討する必要がある.具体的には上でみたように,地理的な条件の劣悪性に基づく家計費あるいは農業生産費の山村地域以外と比べた場合の追加的支出の額をその算定基準とすることが最も効果的であると考えられる.
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