研究概要 |
天然有機繊維として、木材パルプ、綿、キトサン、絹およびコラーゲン(牛皮革裁断屑)を選び、超微細繊維化を行い、得られた超微細化繊維の水けんだく液を用いて、成膜する方法を試み、以下の成果を得た。 1.機械的な解繊方法により、天然繊維から超微細化繊維を得る技術を確立し、いずれの天然繊維原料からもサブミクロン以下の超微細化天然繊維(ミクロフィブリル)が得られ、その直径は数10nmであった。 2.得られたミクロフィブリルの単独またはブレンドした水けんだく液を用いて成膜すると、均一な半透明な膜が得られた。この方法は、水を媒体として成膜するので、特別な有機溶剤などを必要としないので、成膜方法が無公害であり、かつ膜自体も原料以外の不純物を含まないので、環境に優しい材料である。 3.ミクロフィブリルの水けんだく液の濃度を変えることにより、厚さが数μmから数10μmの単独膜または複合膜(ブレンド膜)の成膜が可能となった。 4.得られた単独膜および複合膜の形態を走査型電子顕微鏡および走査プローブ顕微鏡で観察したところ、膜は数nm〜数10nmのオーダーで、均一で平滑な構造を示し、個々のミクロフィブリルの構造は観察されなかった。これは、ミクロフィブリルが強固に水素結合して膜を形成していることを示唆した。 5.種々の膜の物性を調べたところ、その引張強さおよび引張ヤング率の値は、いずれもその原料の該当する紙、膜および不織布に比して、その値を大きく上回るものであった。また、それらの膜の生分解性能を調べたところ、いずれの膜も、土壌中の微生物で、完全に生分解した。 これらの成果は、リグノセルロースとパルプに関する第4回ヨーロッパ・ワークショップ(イタリア、1996,9)、第46回高分子学会年次大会(1997,5)、第9回木材とパルプ化学の国際シンポジウム(カナダ、1997,6)、IUPAC 38th Microsinposium(チェコ、1997,7)、第47回高分子学会年次大会(京都、1998,5)および生分解性プラスチックに関する第5回国際科学ワークショップ(スウエーデン,1998,6)で、それぞれは発表または発表予定(審査済み)である。
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