研究分担者 |
豊原 治彦 京都大学, 農学研究科, 助教授 (90183079)
荒井 修亮 (新井 修亮) 京都大学, 農学研究科, 助手 (20252497)
木下 泉 京都大学, 農学部, 助手 (60225000)
青海 忠久 京都大学, 農学部, 助手 (10144338)
西田 睦 福井県立大学, 生物資源学部, 教授 (90136896)
中坊 徹次 京都大学, 農学部, 助教授 (20164270)
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研究概要 |
ヒラメは北西太平沿岸域に広く分布し,最も重要な沿岸海洋資源生物の1つである.海洋資源生物の管理や培養(栽培)を考える上で,再生産の単位となる集団構造の解明が最も重要な科学的根拠となる.本研究は,ヒラメを研究モデルとして,まず本種の分布量が多い日本海域(九州西岸を含む)を対象に,全道府県より直接採取した稚魚の生理・生態・形態上の地理的変位とmt-DNAによる遺伝的集団構造を調べ,以下の結果を得た. 1.背鰭と臀鰭条数には地理的変異(北に少なく南に多い傾向)が認められた.特に,能登半島を境に不連続的に変異する点や九州西岸及び北海道では変異の傾向が異なる点が注目された. 2.鰭条数は変態開始期の水温が高いほど減少することが実験的に確認された.天然仔魚が経験する水温は南部海域ほど低く,1の地理的変異は生後の環境に起因するものではないと判断された. 3.稚魚期の日成長率は北部海域の値が南部海域の値より高い傾向が認められた. 4.太平洋岸3海域(岩手,千葉,愛媛)を含むほぼ日本周辺全域より得られたヒラメ稚魚のミトコンドリアDNA調節領域の塩基配列は著しく個体変異に富むことが明らかとなった. 5.上記の塩基配列より2つの基本的なハプロタイプが見出され,その比率には採集地点間に有意差は認められなかった.しかし,北海道と佐渡島では得意な組成を示した. 6.若狭湾西部海域で採集された成魚約200個体の上記ハプロタイプ組成を調べした結果,年齢や季節によって差が認められ,個体群による産卵と関連した移動が示唆された. 以上の結果より,日本周辺のヒラメは大きな集団を形成しているが,複数の生理・生態・形態的特徴が微妙に異なるいくつかの産卵集団の存在が示唆され,今後への課題が浮き彫りにされた.
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