研究概要 |
ドコサヘキサエン酸含量(約10モル%)の等しいトリグリセンド、エチルエステル、グリセロリン脂質(主成分はホスファチジルコリン)を調製し、25℃での酸化安定性を酸素吸収量から比較した。その結果、トリグリセリドが最も不安定で、エチルエステルはそれよりやや安定であったがその差は小さかった。一方、リン脂質はこれより非常に安定で、その安定性はダイズ油に匹敵した。この結果から、従来、リン脂質はトリグリセリドに少量加えると安定性が高いことが知られていたが、ある程度トコフェロールが含まれた状態では、リン脂質自身の安定性も中性脂質より優れていることが明らかになった。 構成脂肪酸としてドコサヘキサン酸(純度74%、主要共存脂肪酸ドコサペンタエン酸,18%)のみを含むトリグリセリド、ジグリセリド(1(3),2-型、29%;1,3-型,71%)、モノグリセリド(1(3)-型,91%;2-型,4%)を化学的に合成し、コール酸ナトリウムと蒸留水でエマルションとした後、胸管リンパカニュレーションを行ったSD系雄性ラットに胃内投与行った。リンパ液を経時的に回収し、グリセリド構造の吸収性に対する影響を調べた。その結果、モノグリセリドが投与後4時間では他の脂質よりも2倍以上吸収されており、30時間まで測定したところ有意に吸収速度、回収率とも他の脂質より高く、吸収性にすぐれていることが分かった。他の脂質では吸収速度はジグリセルド>トリグリセリド=エチルエステルであった。ドコサヘキサエン酸エステルは膵臓リパーゼの作用を受けにくいため、部分加水分解物に相当するモノグリセリドの吸収がし易い結果になったと思われる。今回使用したモノグリセリドはリパーゼによった生ずる2-型ではないのにもかかわらず、吸収性がよかったのは興味深い結果である。
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