研究概要 |
主に、アオコを形成する藍藻類が産生するaeruginosin類は、3個のアミノ酸誘導体(Hpla;p-hydroxy-phenyllactic acid,Choi;2-carboxy-6-hydroxyoctahydroindole,Arg誘導体)と1個の通アミノ酸(Leu,Ile,Tyr)よりなる小分子のペプチドであり、トリプシン、プラスミンおよび トロンビンに非常に強い阻害活性を示す。本研究では、生合成の出発物質であるArgそのものを有するaeruginosinの探索を行ったが、発見することはできなかった。しかしながら、その探索の過程で、Microcystis viridis(NIES-102、103)よりargininalを有する aeruginosins 102-A, Bおよびaeruginosin 103-Aを得ることができた。また、Oscillatoria agardhii(NIES-205)よりagmatineを有し、さらに異常アミノ酸である3-hydroxyleucineとxylopyranoseを持つ配糖体直鎖ペプチドを単離・構造決定することができた。これらと今まで当研究室で得られた結果を考えあわせると、aeruginosin類の生合成機構は、Argを有するaeruginosinがargininal、argininol、agmatinへと次第に還元されて精製されるものと考えるのが妥当であると思われる。イミノ酸であるChoiの生合成については、M.aeruginosa(NIES-98)13CでラベルしたTyrの投与実験を行ったが、明確な取り込みを確認できなかったが、芳香族アミノ酸が取り込まれた後、還元される経路が存在するものと思われる。 また、M.aeruginosa(NIES-98、298)より得られたaeruginosin類とトリプシン、トロンビンのコンプレックスを作製し、X線解析により阻害機構を解明した。その結果、Arg誘導体が活性発現に重要な役割を果たしていることが判明した。
|