研究概要 |
本研究は、流域地形情報をワークステーションを介して流出予測への応用を図ることを基本目的とする。特に、山陰地方の農山村主体の中山間地に視点を置いた議論を展開するため、益田農地造成域、斐伊川流域及び島根大学付属演習林に試験流域を設定した。研究実績の概要は以下のとおりである。1.(1)長短期流出両用モデル及びKiWSモデルを活用して、流域地形効果、不浸透面積率を考慮した解析が可能な流出解析法を提示し、その適用性を試験流域で検討した。(2)UNIXワークステーションによる流出解析プログラムの開発を行い、データ入力から流出解析及びハイドログラフ出力までの一連の解析・図形出力が可能な流出計算システムを構築することができた。2.(1)斐伊川下流の循環潅漑水田流域において、水文循環と溶質の挙動を解析した。そして、水田潅漑期における他の排水系統から導入される水移動量や循環水量、それにその水移動によって移動する物質循環量を、河川底質や水性植物の水質浄化機能などと関連させながら、流域環境の保全の観点から定量評価した。(2)中山間地域の傾斜畑における降水-流出系の特性を把握するための基礎実験として、傾斜ライシメーターによる水文動態を計測した。その結果、浸透流出量は降水量の約60%に相当し、また、積算降水量がある程度まで達しないと地表流出が生じないことを明らかにした。3.(1)水田・畑地・森林で非破壊土壌を採取し,軟X線を用いて土壌中の水移動を解析した。その結果,水田では鉛直方向に卓越した管状孔隙内を,畑地ではネットワークを組んだ管状孔隙内を水が選択的に流れ,レイノルズ数が数十になっており,流れは層流から乱流への遷移状態にあることがわかった。すなわち乱流モデルを取り込んだ新しいモデルが必要であることが示唆された。一方森林では選択的な流れは少ないことが明らかになった。
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