研究概要 |
1)ストレス疾患モデル動物,2)精神分裂病様モデル動物,3)薬物依存モデル動物および4)学習記憶障害モデル動物を用いてシグマ受容体関連化合物の作用を調べ,以下の知見を得た. 1. シグマ_1受容体作動薬の(+)-SKF-10,047およびdextromethorphanは,phenytoin感受性シグマ_1受容体を刺激することによってマウスにおける恐怖条件付けストレス反応を緩解し,この緩解作用の発現には中脳辺縁系ドパミン作動性神経系の賦活化が関与していることを見い出した.また,シグマ_1受容体に親和性を有するニューロステロイドのdehydroepiandrosterone sulfate(DHEAS)およびpregnenolone sulfateは,シグマ_1受容体を刺激することによってマウスにおける恐怖条件付けストレス反応を緩解し,逆に,ニーロステロイドの中でもprogesteroneは,シグマ_1受容体拮抗作用を有していることを見い出した. さらに,ストレス反応の発現に内因性のDHEASが重要な役割を果たしていることを見い出した. 2. (+)-SKF-10,047をマウスに連続投与すると,PCPを連続投与した場合と同様に精神分裂病陰性症状様作用を惹起するが,シグマ受容体拮抗薬のBMY-14802は,PCP誘発精神分裂病陰性症状様作用を改善しないことを見い出した.従って,シグマ受容体はPCPによる精神分裂病陰性症状様作用の発現に関与しているが,シグマ受容体拮抗薬はその治療薬としての可能性は少ないことが示唆された. 3. PCPでsalineに対して弁別を形成したラットにおいては,シグマ_1受容体作動薬は般化せず,PCPの弁別刺激効果は,シグマ受容体拮抗薬によって影響されなかったことから,PCPの弁別刺激効果にシグマ受容体は関与していないことを見い出した. 4. 一酸化窒素(NO)合成阻害剤や非競合的NMDA受容体拮抗薬のdizocilpineによるマウスやラットの空間認知記憶障害は,シグマ_1受容体を刺激することによって改善されることを見い出した.また,シグマ_1受容体は,空間認知記憶に関与していることが示唆された.
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