研究概要 |
35億年前、地球にまだ酸素が存在しなかった頃に地上に現れた最も古い細菌の一つである硫酸還元菌は、嫌気下で硫酸を還元して硫化水素を発生する過程でATPを生成して生き続けている。この細菌のエネルギー代謝は緑色の硫酸還元酵素フェレドキシンとチトクロームc_3を介して電子伝達系を形成している。1993年に阿久津らによってチトクロームc_3のヘムの2,7位のメチル基が、従来の好気性の細菌や哺乳動物と違って、メチオニンのメチル基に由来することが発見され、新しい研究が開発された。硫酸還元菌Desulfovibrio vulgarisにδ-アミノレブリン酸、メチオニンを加えた生成したポルフィリン誘導体を分離、精製してその構造を調べたところ、従来のポルフィリン生合成の中間体以外にprecorrin-2, (12, 18-didecarboxy) precorrin-2が発見され、それらの構造が確立された。これらの中間体の化学構造を考えると硫酸還元菌におけるポルフィリン生合成経路はウロポルフィリノーゲンIIIがメチル化され、precorrin-2が生成し、次いで12, 18位の酢酸基が脱炭酸した。(12, 18-didecarboxy) precorrin-2になり、更に2, 7位の酢酸基が脱離してコプロポルフィリノーゲンIIIに転換すると予測される。最近我々は培養細菌から可溶化した3つの酵素1) Uroporphyrinogen-SAM-methyl transferase (SUMT), 2) Precorrin-2 decarboxylase, 3) acetate eliminaseを分離し、上記の反応がstepwiseに進行することを証明した。今後この3つの酵素反応の詳しい反応機構を研究する予定である。
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