研究概要 |
1,我々の研究で発見したRas蛋白質とRaf-1蛋白質Cysteine-rich領域(CRR)との間のRasの翻訳後脂質修飾(ファルネシル化)依存性の新しい相互作用機構に基づき,がん抑制遺伝子産物RaplA(Krev-1)の作用機構を解明した。RaplAは、Raf-1CRRに対して翻訳後修飾依存性に非常に強い親和力を持ち、Ras存在下でRas-RaplA-Raf-1の三者複合体を形成することにより,RasのRaf-1CRRへの結合を阻害する事により、RasによるRaf-1活性化を抑制することがわかった。RasとRaplAの相拮抗する活性が、両者のアミノ酸番号31番の1残基の相互置換(グルタミン酸とリジンの置換)によって決定されることを示した。 2,出芽酵母アデニル酸シクラーゼのRas蛋白質による活性化において、Rasの翻訳後脂質修飾(特にファルネシル化)が必須である分枝機構を明らかにした。Rasのファルネシル化は、アデニル酸シクラーゼとの結合親和力には影響が無いが、Rasによるシクラーゼ活性化に必要である。この活性化には、アデニル酸シクラーゼがシクラーゼ結合蛋白質CAPと結合していることが必要であり、CAPを結合していないアデニル酸シクラーゼに試験管内でCAPを結合させることにより、Ras翻訳後修飾のシクラーゼ活性化効果を再構成することに成功した。この結果は、CAPがRasに付加されたファルネシル基の受容体であり、翻訳後修飾の影響を仲介する可能性を示したので、「蛋白質に付加された翻訳後修飾基の受容体蛋白質」という新概念を提唱した。 3,蛍光偏光度測定法によりファルネシル化されたRasのカルボキシル末端合成ペプチドとの結合を測定した所,CPAについては結合測定に成功したが、Raf-1CRRについては低親和力のため不可能であった。
|