研究概要 |
CD4^+T細胞をMHCclassIIのみ相違があるマウスに移入するとPBC類似病変が出現する。まずこのモデルから肝浸潤CD4^+T細胞を経時的に分離し病変が完成するまでの初期段階でのサイトカインmRNA発現の変動を検討した。次にCD4^+T細胞活性化に必須な接着分子に対する抗体を投与し病変を制御できるか否か検討した。その結果、1)移入後day5で門脈域でCD4^+細胞浸潤を認めた。day14で病変は最大となりCD4^+細胞の他、CD8^+,B220^+,Mac-1^+細胞も認めた。肝浸潤CD4^+T細胞のサイトカイン産生の変動をみるとIFN-γmRNA発現の上昇をday3に認めday14まで続いた。IL-10mRNAはday14で発現の上昇を認めた。血清AMAはday14でcontrolとday5に比べ有意な上昇を認めた。2)本モデルへ抗VLA-4抗体、抗LFA-1抗体投与することで浸潤が抑制された。しかし免疫染色で抗体投与群は非投与群同様CD4^+、CD8^+、B220^+、Mac-1^+細胞が検出され浸潤の量的な抑制はあるが質的な変動はないことが示唆された。また抗体投与群と非投与群で肝浸潤CD4^+T細胞のIL-2,IFN-γ,IL-4,IL-10のmRNAの発現量は変動がなかった。このことより抗VLA-4抗体はTh1/Th2バランス非依存性に病変を抑制していることが示唆された。以上よりTh1は病変形成以前から完成まで一貫してそのmRNA発現を認め、本モデルで重要な役割を果たしていることが示唆された。また遅れて産生したいIL-10はTh2サイトカインとして肝局所のTh1に傾いたサイトカインバランスを是正するために分泌されてきたと推測された。また本モデルで抗VLA-4抗体を投与することでサイトカイン非依存性に肝病変が抑制されることが明らかとなり、今後治療に応用が期待できる可能性が示唆された。
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