研究概要 |
本研究の目的は、不全心筋ないしは肥大心筋の形成過程における心筋細胞内情報伝達路の間の相互作用、いわゆるクロストークの意義を明らかにすることであり、主に以下のような検討を行った。 1.心筋細胞における誘導型一酸化窒素合成酵素の機能的意義とその発現調節機構:新生仔ラットおよびニワトリ胚由来の培養心室筋細胞を用いて、iNOS遺伝子の発現調節機構と発現したiNOSの機能的意義について解析を行った。その結果、iNOS遺伝子の発現には種々の蛋白キナーゼ系や転写因子の間のクロストークが重要であることが示され(Kinugawa K,et al,Circ Res,1997)、さらに、発現したiNOSが心筋機能抑制作用を発揮することが示された(Kinugawa K,et al, Am J Physiol,1997,Shimizu T, et al, Cardiovasc Res, in press)。 2.血小板由来成長因子(PDGF)による心筋細胞成長促進作用の分子機構:ニワトリ胚由来培養心室筋細胞に対するPDGFの成長促進作用においては、早期遺伝子c-fosの誘導、MAPキナーゼの活性化、転写因子AP-1の活性化などが重要である可能性が示唆された。 3.サイトカインによる心筋機能抑制作用における細胞内情報伝達路のクロストーク、特に心筋機能抑制系と刺激系(cAMP系)との間のクロストークについて:同一のモデル(成guineapig由来の単離心筋細胞)を用いて、IL-6とTNF-αの作用機序を比較検討した。その結果、IL-6とTNF-αの両者はともに、基礎条件ではL型Ca^<2+>チャネル電流を変化させなかったのに対し、isopreterenolで増強した電流は有意に抑制した。 4.心筋細胞にアポトーシスをきたす細胞内情報伝達路:Interferon(IFN)-γが心筋細胞にアポトーシスを来す経路として、転写因子interferon regulatory factor (IRF)-1の活性化、及び酵素caspase 3発現の上昇が重要であることが示唆された。
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