研究概要 |
1.ジヒドロピリミジン尿症の化学診断とマススクリーニング(1万例の分析結果) (1)成人女性例と乳児1例を新たに化学診断した.本研究者の診断した症例は4例(3家系)となった.現在までに本研究例を含めても7例(海外ではオランダ2例,英国1例)が報告されているに過ぎない.しかし,本研究結果により,本邦での頻度は人口5,000名に1例(乳児尿マススクリーニング:2例/1万例)であると推定した.本邦の4例全てが無症状であった. 2.ジヒドロピリミジン尿症の遺伝子診断 (1)世界に先駆けて,遺伝子診断に成功した.末梢白血球のDNA解析のより,3家系のホモ,ヘテロの診断を行い,オランダの1例についても解析中である. 3.ピリミジン系化学療法剤(5-FU)の副作用予知・防止への応用 (1)担癌年齢層をを含む成人尿ピリミジン(ウラシル,ジヒドロウラシル)値は対数正規分布になることと,それらの基準値を明かにした.この基準値とウラシル負荷試験により,血清/尿ピリミジン分析が5-FUの副作用予知・防止に応用できることを明かにした. (2)5-FUの致死的副作用を引き起こす,チミン・ウラシル尿症(DPD欠損症:本邦では未だ報告されていない)の発症頻度は,本邦ではジヒドロピリミジン尿症に比較して低いと結論した. (3)DPD欠損症とジヒドロピリミジン尿症の完全欠損症は随時尿ピリミジン分析で化学診断可能であることを証明した.しかし,そのヘテロの化学診断にはウラシルとジヒドロウラシルの比,ウラシル負荷など,今後さらに検討が必要である.
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