研究概要 |
1. 放射線誘導アポトーシスと関連する遺伝子(産物)の免疫組織化学的検索:ヌードマウス可移植性ヒト腫瘍を用いた実験結果からは,照射後6時間で採取した組織中に出現するアポトーシスの頻度と放射線感受性との間には相関性が認められた.とくに,放射線感受性の高い上衣芽腫ではp53依存性のアポトーシスが誘導されることから,放射線治療開始前のp53の検索が照射効果の先行指標となりうる可能性が示唆された. 2. 病理組織学的所見・アポトーシス関連遺伝子蛋白の発現と照射効果との関連性の検討:放射線治療を主体に治療を行った非小細胞肺癌36症例について生検組織標本のp53蛋白発現の有無と治療成績を検討した.その結果,p53蛋白発現が陰性の症例は陽性例にくらべて有意に照射効果が良好で,生存率も延長する傾向が認められ,生検組織標本でのp53蛋白の染色性の有無が照射効果の先行指標となる可能性が示唆された. 3. 局所制御に要する線量に関する腫瘍径・組織型別検討:末梢型非小細胞肺癌の局所制御に要する線量を検討すると,Tlは線量70〜75Gyで80%,T2は5cm以下であれば75Gy以上の線量で50〜70%の局所制御が期待された.治療後2年非担癌症例の組織型別の予後をみると,扁平上皮癌症例の97%は5年生存しており,扁平上皮癌は局所制御がそのまま治癒に結びつく疾患で,放射線治療の良い適応疾患であると考えられた. 4. 抗癌剤の放射線増感剤としての作用機序:アポトーシスを誘発するとされている新抗癌剤Taxolと放射線との併用効果をin vitroの系で,同一起源であるが,放射線感受性の異なる2種類の腫瘍を用いて検討した.検索した範囲では,薬剤の併用によりアポトーシスの頻度が増加しても,放射線感受性は相加効果の域を超えていなかった.しかし,放射線低感受性腫瘍では併用による利益が期待された.
|