研究分担者 |
MARCO DURANT 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, STAフェロー
前澤 博 東海大学医学部, 放射線科学, 講師 (00138653)
鈴木 雅雄 放射線医学総合研究所, 第3研究グループ, 研究員 (70281673)
明石 真言 放射線医学総合研究所, 放射線障害医療部, 研究員 (10222514)
DURANTE Marco Natl Inst Radiol Sci, 3rd Research Group, head Visiting Scientist
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研究概要 |
放射線による損傷について,細胞致死とクロマチン損傷との関係を調べた.ヒト皮膚由来の正常培養細胞に対してX線と重粒子炭素線で照射し,24時間後に残存するクロマチンの断片化を未成熟染色体凝集法にて検出した.放射線残存しているクロマチンは,炭素線,X線ともに線量に対して直線的に増大し,また細胞致死と類似な炭素線RBEを示した.がん細胞についても同様な結果が得られ,未成熟染色体凝集法による修復されないクロマチン切断検出法が細胞障害の測定に適応可能であることを示唆する結果を得た.また,未成熟染色体凝集を起こす化学物質cacyculinを使用することにより放射線によるクロマチン切断を効率的に検出できることが分かった.炭素線にて4時間間隔で5回分割照射された不死化ヒト皮膚上皮細胞の致死感受性は,分割照射期間中に変化しなかった.インビボでは,炭素線照射したマウス下肢部皮膚障害反応が分割回数とLETに依存して変化した.さらに皮膚では炭素線分割照射期間内に損傷修復と細胞増殖が変動している可能性が示唆された.放射線照射により正常細胞の遺伝子が発現すると考えられた.ヒト単球系白血病細胞株THP-1をX線照射するとTNFの産生が増加し,同時に核抽出物にNFkBの活性化が認められた.結論として,放射線照射による正常組織障害はクロマチン損傷に基づく細胞致死損傷に起因し,サイトカイン誘導を始めとする遺伝子発現をもたらし,亜致死損傷の修復や細胞増殖による組織修復にいたる,と考える.今後は組織修復に寄与する因子を更に解析することが大切であろう.
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