研究概要 |
本研究では、アドレノメデュリン(AM)の遺伝子発現および分泌調節とシグナル伝達機序の解析を行い以下のような成果を得た。 心不全時に血漿AM濃度は増加するが、その由来については不明であった。心不全時の血漿中AMの産生臓器について、ラット心不全モデルを作成して検討した。その結果、心不全群では心筋重量,LVEDPの増加と共に血漿AM濃度も増加すること、組織AM濃度は、腎臓,副腎では変化しないが心臓,肺では増加し、AMmRNA発現の亢進も見られた。これらのことより、心不全時のAMの由来として心臓,肺での産生の亢進が示唆された。 AM遺伝子の5'プロモーター領域をヒト大動脈由来の培養血管内皮細胞(HAEC)に導入し、ルシフェラーゼ活性を指標に発現活性を検討した。プロモーター領域の-85〜-93baseに存在するNF-IL6及び-33〜-68baseのAP-2のコンセンサス配列や-21〜-26baseのTATAboxの欠落により発現活性が低下することから、これらのシス・エレメントがAM遺伝子発現の制御に関与することが示唆された。 AMの血管作用における内皮由来一酸化窒素(NO)とcGMPの関与の程度を知るために、cGMP特異的phosphodiesterase(PDE)阻害薬であるE-4021がAMの血管拡張に及ぼす効果を、ラット単離潅流腎と宗部大動脈ring標本で検討した。その結果、cGMP特異的PDE阻害薬であるE-4021がAMによる血管拡張を増強したことより、AMの血管作用の一部はNO-cGMP系に依存していることが示された。 PPAMP-20(PAMP[1-20])は、AM前駆体から産生される降圧活性ペプチドである。PAMP-20のC末端部認識するRIA法を開発し、これを用いてブタ副腎髄質より、PAMPのC末端側12残基のPAMP-12をPAMP免疫活性の主要分子として単離,同定した。PAMP-12はPAMP-20と同様に降圧活性を有することから、PAMP-20の生理的役割の一部を担うものと考えられる。
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