研究概要 |
高度侵襲下の肝障害におけるImmediate early genes(IEGs):前初期遺伝子群の役割と位置づけを明らかにするため、Wistar系ラットを用いて障害肝モデルを作製し、各モデルにおける生存率と、Northern blottingによる肝のIEGs(c-fos,c-jun,zif)のm-RNAの発現を検討した。 1, 出血性ショックモデル:頸動脈脱血で40mmHgの低血圧を1時間維持した後、還血するモデルと低血圧を2時間維持した後、脱血量の4倍量の乳酸化リンゲル液を補うモデルを作製した。後者は前者に比して生存率が低下し、ショック後の肝におけるIEGsは、より遷延性に強く発現した。 2, 閉塞性黄疸モデル;総胆管結紮により閉塞性黄疸を作製した。肝切除2週間後の生存率は正常肝切除に比して低下し、IEGsは肝切除後30分から1時間で強く発現した。 3, 脂肪肝モデル;コリン欠乏食を4週間投与して脂肪肝モデルを作製した。肝切除1週間後の生存率は正常肝切除に比して低下し、IEGsは30分から2時間で遷延性に強く発現した。また、肝虚血再灌流を加えると正常肝に比して1週間生存率が不良で、IEGsは正常肝に比して血流再開後1〜3時間で遷延性に強く発現した。 4, 糖尿病モデル;streptozotocinを静脈内に投与して糖尿病モデルを作製した。肝切除後の1週間生存率は正常肝切除に比して低下し、IEGsは肝切除後30分〜2時間で遷延性に強く発現した。 以上より、肝では、出血性ショック、肝切除、肝虚血再灌流などの侵襲の後に、IEGsが発現するが、閉塞性黄疸や脂肪肝などの障害肝や糖尿病状態では生存率が低下し、IEGsは遷延性に強く発現することが明らかとなった。
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