研究概要 |
単純ヘルペスウイルス1型(以下HSV)由来の欠損型非増殖性HSVベクター発現系とサイトカイン遺伝子を用い、癌性腹膜炎の治療実験をおこなった.HSVベクターのクローニングサイトにはマーカー遺伝子のlacZ,治療遺伝子のhumanIL-2またそのコントロールとしてanti-senseを組み込み,導入効率と感染のコントロールについて改良,発展させた. In vitroでは悪性度の異なるヒト胃癌細胞株であるMKN28とMKN45をIL-2ベクター(HSV/IL-2)と培養し上清中へのIL-2の産生をELISA法にて測定したが,両者とも感染率に応じて効率的にIL-2を産生した.高濃度のベクターとの培養では,腫瘍細胞へのcytotoxicな影響が認められた.ヒトリンパ球への導入効率についてはさらに検討中である. In vivoではMKN45細胞を腹腔内に移植したヌードマウスの癌性腹膜炎モデルを作製した.HSV/IL-2による癌細胞のex vivotreatmentではマウスに腫瘍(MKN45)は生着せず全例生存し,一方anti-sense vectorに治療効果はなく全例死亡した.腫瘍移植後の治療実験では移植7日目のHSV/IL-2単回投与では50%が,14日目の投与では25%が生存した.また治療過程のマウスの免疫パラメーター(NK活性,血清IL-2,血清INF-γ等)は,著明に上昇していた.治療効果はNK細胞のブロッカー(抗アシアロ-GM1抗体)にて消失しまたメモリーも存在しないため,NK細の活性化によることが確認された.
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