研究概要 |
弁膜症に対する外科的治療は人工弁が主体であるが,代用弁としての同種生体材料による弁は抗感染性,抗血栓性に優れており,大動脈弁位や肺動脈弁位は臨床応用においてその素晴らしい成績が報告されている.一方僧帽弁位では外科的修復術として近年弁形成術が再注目されているが,その手技の完成度については未だ確立されたものではなく,また同種生体弁について満足できる結果が得られていないのが現状である.我々は同種生体材料使用の際に問題となる供給源という点から凍結保存法に着目し,手術手技の簡便化と同種生体弁の優れた利点を考慮し,僧帽弁用フリーハンドホモグラフト弁の実験的研究を進めてきた.今回,同弁についてその可能性と移植後急性期の血行動態についてブタを用いた移植を計6頭に行い,その結果を取りまとめて報告する.〈方法〉ブタを用いて僧帽弁を腱索及び乳頭筋を残して採取,凍結保存した後急速解凍し,人工心肺下に同種弁移植術を行った(n=6).人工心肺離脱後,血行動態評価として大動脈圧(AP),左室圧(LVEDP),左房圧(LAP)を測定し,弁機能評価として心臓超音波診断装置を用いた.病理組織学的評価を行うため解凍後及び実験終了後の弁組織を採取した.〈結果〉人工心肺離脱後のAP124±6mmHg,LVEDP7±1mmHg,LAP8±2mmHgであった.4例に弁形成術や弁輪形成術の付加的処置を行った.心臓超音波診断装置では全例で弁逆流をほとんど認めなかった.病理組織像では解凍後の乳頭筋の組織構築は保たれており,移植手術終了後では炎症性細胞の浸潤は特に認めなかった.〈結論〉ブタを用いた僧帽弁用フリーハンドホモグラフト弁の弁機能及び血行動態は良好なものであり,またホモグラフトの病理組織学的構築は満足できるものであった.今後より長い耐久性を期待し,更なる検討が必要である.
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