研究概要 |
下垂体腺腫の分類は、従来臨床内分泌的分類、免疫組織化学、電子顕微鏡による形態を重視する分類が用いられてきたが混沌としていた。我々はこれらを統合した国際的機能臨床分類を確立すべく、下垂体腺腫600例の手術時摘出組織を免疫組織化学、電顕、in situ hybridizationを用いて検索を行った。その結果、臨床内分泌所見と免疫組織学上のホルモン産生、in situ hybridization上のホルモン遺伝子発現の間に一致しない症例の存在が明らかとなった。特にsilent腺腫の中にgonadotropinの蛋白または遺伝子発現がそれぞれ50%,80%の頻度で見られた。そこでされに細胞起源に基づく分類が必要と考え、機能分化に関与するとされる下垂体特異的蛋白転写活性因子や転写因子としての核内受容体,すなわちEstrogen receptor,retinoid X receptor機能分化や細胞増殖を調節する視床下部ホルモンとそのレセプターの発現をin situ RT-PCR法を用いて検討し、下垂体ホルモン産生との関係を詳細に分析した。すなわちGH,PRL,TSH産生腺腫においてPit-1が、PRL産生腺腫にEstrogen receptor,TSH,GH産生腫瘍にretinoid X receptor,Gonadotropin産生腫瘍にGnRH,GnRH-R,GH産生腫瘍にGHRH,GHRH-Rが関与していた。これらの知見を踏まえ、新しい下垂体腺腫の臨床細胞機能分類を確立・提唱するに至った。
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