研究概要 |
足関節機能的不安定性は,神経・筋の不全が原因と考えられている。強い足関節不安定感を特徴とするが,病態は不明である。機能的不安定性を他覚的にとらえる指標は,バランスボード上での不安定性と腓骨筋反応時間(PRT)が知られている。バランスボードの不安定性はStability system(Biodex社)のS-tability Index (S1)を用い,PRTを計測するシステムは依頼作成し,機能的不安定性患者を検討した。 SIは片脚でバランスボード上に立った時の重心の偏位を現す指数で,大きいほど重心の動揺が大きいことを意味する。患者群でのSIは2.2,健常群は2.1で両者に有意差はなかった。またPRTは(単位msec)患者群90.1,健常群72。1と有意に遅延していた。さらにSIとPRTの相関を見ると,患者群では相関はなかったが,健常群で有意に正の相関を認めた(r=0.677)。以上よりPRTとSIはともに機能的不安定性を反映しているが,SIは他の代償機転が働きやすく,患者群ではその代償機転が強く働きバランスを安定化させていると考えた。 機能的不安定患者には,足関節を支える靭帯を神経終末が多く局在する足根洞に痛みを訴え,同部位に局所麻酔剤を注入すると不安定感が消失する患者が多い。その患者群の局注前後のPRTを測定すると(単位msec)局注前平均79.8(健常71.8)であった。患者群では局注後不安定感の消失しPRTが正常化したことより,機能的不安定性の中には可逆的な症例があり,それらでは足関節周囲の抹消神経系よりの刺激が発現に関与していたと考えた。また,健常群では局注前後で反応時間が変化しなかったことも併せて,従来の神経終末の機械受容体障害による病態という節には否定的な結果が出た。
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