研究概要 |
研究の目的)手術侵襲による第三間隙が形成され非機能的細胞外液量が増すといわれている。アルブミンの通過する穴を大分子コロイドで塞ぐことは第三間隙形成を抑え、浮腫を抑制し周術期の水分代謝を有利にする可能性がある。第三間隙の形成をどの大きさのコロイドがどの程度抑制するかを明らかにする事を目的とした。 方法)侵襲を一定にするために、虚血再潅流実験とした.ラット38匹を生食群(n=10),6%サリンヘス群(n=10,重量平均分子量70,000),ペンタスターチ群(n=9,重量平均分子量280,000),5%Alb群(n=9,分子量69,000)の4群に分けた.左後肢全体をゴムバンドで縛り,3時間虚血モデルを作成した.3時間後,ハロ-セン酸素麻酔下に尾静脈にカニュレーションし、それぞれの輸液を0.015ml/g(=15ml/kg 血液量の約15%)輸液した後,タ-ニケットを解除し再潅流させた.その後ケージにいれ,24時間後にハロ-セン酸素麻酔下に後肢のひ腹筋を取り出した.右後肢はinternal controlとした.標本の一部を光学顕微鏡による形態変化観察のため切除,ホルマリン固定しPAS染色した.他はwet/dry weight比算出のために池本理化社製電子水分計MA30で測定した.結果は一元配置分散分析で統計処理し,危険率5%未満を有意とした. 結果および考察)各群において3時間虚血後の再潅流足は著明な浮腫を生じ,健足に対し水分含量比は1.7から1.85であったが,4群間に差はなかった.光学顕微鏡による形態変化は,細胞間質の浮腫を認め,ハイドロキシエチルスターチの血管外漏出と考えられる粒子像が多数認められた.虚血再潅流の侵襲が強すぎたため,4群間の水分含量に差が認められなかったと推測された. 結語)虚血再潅流実験により筋肉細胞間質に著明な浮腫とコロイドの血管外漏出を認めたが,コロイド投与による組織水分含量に差は認められなかった.
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