研究概要 |
(研究目的) 妊娠を維持する機構を解明することは,早産の予防に貢献し,周産期死亡率役立つことは周知の事実である.かかる観点から妊娠維持に関与する凝固・線溶・キニン系をはじめとする諸因子の検索を行ったのであるが,継続年度の途中すなわち平成9年度あたりから,妊婦に血栓症が増加しているとの報告が続いている.すなわち食生活の欧米化に伴い産科領域においても血栓症の発症頻度が増加している.こうした背景をもとに母体のThrombophilia(血栓症)に関与する過凝固・低線溶の指標となるマーカーを追求し,妊娠維持との関連を追求しようと試みたのが第一の目的である.第二には,早産といえども妊娠22〜36週の分娩であることに変わりはない.よって分娩の発來機構を抑制する方法を講じるためには如何にすべきかを検討することを目的とした. (研究方法)対照として正常妊婦20例,早産妊婦17例を対象とした. 1) 線溶系の指標としてPAI-1,PAI-2,およびユーグロブリン溶解時間を用い,1st Trimester,2nd Trimester,3rd Trimesterと陣痛発來時について各々測定した. 2) PFA(Platelet Function Analyzer)-100を用い,Platelet Hemostatic Capacity(PHC)を測定した.すなわち,CT(Closure Time)でPHCを表現し,Epi-nephrine添加時,ADP添加時のCTをPCE,PCAとした. (成績) 1) PAI-1,PAI-2は,正常妊婦,早産妊婦ともに2nd Trimesterに増加した.すなわち,PAI-1では早産妊婦94.6±11.6(正常91.7±12.9)(ng/ml)でありまたPAI-2では早産妊婦226.8±23.8(正常248.8±21.5)(ng/ml)と有意の差を認めなかった.ユーグロブリン溶解時間では早産妊婦17.5時間(平均)正常妊婦18.3時間とやはり有意差はなかったが,陣痛発来時には早産妊婦3.5時間(正常3.2時間)と著明に短縮した. 2) PCE/PCAは早産妊婦では1st Trimester では平均1.36(正常妊婦 1.33)と有意の差はなかったが、2nd Trimester では平均 1.24(正常妊婦 1.38)とやや低下の傾向を示した.
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