研究概要 |
1. ハブラシ摩耗およびthree-body wear測定用改良型摩耗試験機の試作 当教室保有の歯ブラシ摩耗試験機の歯ブラシ取付け部および試料固定台を改良し,新型摩耗試験機(小玉製作所製)を製作した。 2. フィラー粒子径の異なるレジンセメントの試作:クラレ社に委託し,フィラー粒径の異なるレジンセメントを試作した。デュアルキュア型試作レジンセメントのモノマー組成はBis-GMA(70%)/TEGDMA(30%)であり,フィラーとしてSiO_2を使用している。フィラーの含有量および平均粒径を下表に示す。 2. 歯ブラシ摩耗量(3万回)とthree-body wear量(20万回)の測定 (2-1)実験材料:レジンセメント;試作レジンセメント4種類,CAD/CAMシステム;CEREC2システム(シーメンス社製)VitaポーセレンブロックMarkII,接着システム;クリアフィルライナーボンドII(クラレ社製),K-エッチャントGel(クラレ社製),クリアフィルフォトボンド(クラレ社製),クリアフィルポーセレンボンド(クラレ社製),被験歯:ヒト抜去上下顎大臼歯(齲蝕,亀裂のないもの)(2-2)試料の作製:咬頭を削除したヒト抜去大臼歯の咬合面中央部に直方形窩洞を形成し,当教室現有のCEREC2システムによりセメント厚径が約150〜300μmに調整されたセラミックインレーを作製した。メーカー指示に従って窩洞内を処理した後,各試作レジンセメントを用いて窩洞内にインレーを合着し咬合面を平坦に仕上げた。(2-3)摩耗試験:改良型摩耗試験機に試料を取付け,3万回の歯ブラシ摩耗試験および20万回のthree-body wear摩耗試験を行った(各レジンセメントにつき3回繰返し)。 3. 摩耗量の測定:表面粗さ形状測定機(Surfcom475A)を用いてレジンセメント摩耗面の微細形状を8箇所において拡大トレースした。個々のトレース上でセレックインレー辺縁を基準にしてセメントの摩耗最深部までの距離を測定してこれを摩耗深さとした。3試料から合計24箇所の摩耗深さを測定しそれらの平均値を各レジンセメントの摩耗量とした。各摩耗量の測定結果を下表に示す。 〓 ANOVAとScheffe法により,各試作セメント間における歯ブラシ摩耗量あるいはthree-body wear量を比較したところ,両者ともIとIVの間を除く各試作セメント間に統計学的有意差が認められた。この結果をフィラー粒径と各摩耗量との関係において分析すると,歯ブラシ摩耗ではフィラー粒径が大きいほど摩耗量が少なくなる傾向が,逆にthree-body wearではフィラー粒径が大きいほど摩耗量が多くなる傾向が認められた。歯ブラシ摩耗試験後のSEM所見では,フィラーの突出が顕著に観察され粗造感を呈していたが,フィラー平均粒径が1μm未満ではフィラーの突出はみられず,滑沢な面が観察された。three-body wear試験後のSEM所見では,フィラーの脱落により凹凸が顕著に観察され粗造感を呈していたが,フィラー平均粒径が1μm未満ではフィラーの脱落による凹凸は不明瞭で滑沢な面が観察された。
|