研究概要 |
本研究では,生体材料の表面で骨芽細胞を培養し,フォーカルコンタクトの形成をビンキュリン抗体染色した細胞の蛍光顕微鏡観察によって調べた.材料はヒドロキシアパタイト,a-TCP,β-TCP焼結体,チタン合金,アパタイトコーティングチタン板,超高分子量ポリエチレン(UHMWPE),TCP/CPLA複合体を使用した.細胞培養に使用する試料の大きさは直径10mm,厚さ2mmとした.これらの試料の表面でマウス由来骨芽様株細胞UMR106を培養した.これらの細胞を培養24時間後に固定し,モノクローナル抗ビンキュリンによる蛍光抗体染色を行った.落射蛍光顕微鏡でビンキュリンの局在を調べ,各材料表面における細胞のフォーカルコンタクトの形成を調べた. アパタイトコーティングチタン板は表面が粗いため,TCP/CPLA複合体は自己蛍光が強いため観察に適さなかった.細胞はアパタイト,a-TCP,β-TCP焼結体,チタン合金の上でよく拡がり,フォーカルコンタクトを形成していた.一方,UHMWPEの表面では細胞は丸く,フォーカルコンタクトの形成は少なかった.画像解析の結果,細胞面積はアパタイトが最も大きく,UHMWPEが最も小さかった. 上と同様の方法でタリン,インテグリンの抗体染色を行ったが,これらの細胞接着分子の有意な蛍光標識を得ることができなかった.この理由はタリン,インテグリンのアミノ酸配列の種差が大きく,抗原と抗体が結合しなかったためと考えられる.また,ヒト骨腫瘍由来のHOS細胞を用いて,ビンキュリン抗体染色を行った.HOS細胞はすべての材料の表面でよく拡がり,フォーカルコンタクトを形成していた.細胞面積もUMR106細胞より大きかった.これはHOS細胞が培養系でファイブロネクチンを大量に産生したためと考えられる.
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