研究概要 |
本研究は顎関節症に対する直線偏光型近赤外線照射治療の効力を評価するとともに,その作用機序と適応症を明らかにすることを目的として実施した.まず,これまでの研究結果を背景に,症例数を増やすとともに顎関節症の症型による照射効果の差異や,自覚的評価を加えて短期的な照射効果を検討した.次に,二重盲検下で照射効果を評価することと,組織血流量の変化から作用機序を推察することを試みた. 1. 顎関節症患者30名に対する照射による短期的効果を,疼痛の緩和,開口量の増加,ならびに障害の自覚的改善程度から評価し,照射治療の適応症を考察した. (1)疼痛の強さを示すVAS値は有意に減少した.(2)開口量は順次増加し,無痛最大開口量は有意に増加した.(3)疼痛点数,顎機能障害点数,日常生活障害点数は有意に減少した.(4)照射効果には個人差が認められ,年齢,発症からの期間,症型,悪習癖などの要因との関連性が示唆された.(5)発症からの期間が短い若年者で,症型分類I型,II型の顎関節症患者に対し最良の照射効果が細待できる. 2. 照射,偽照射を二重盲検管理下に置く方法は,照射器の発光装置自体のデジタル回路を変えることは不可能であったため,乱数表に従って研究協力者が照射・偽照射で固定抵抗を切り替える方法に変更した.また,偽照射は赤色光が可視できる最低量である最大出力の約20%とし,照射音のみとした.この二重盲検法で,臨床所見に血流量と皮膚温変化の計測結果を対比させ照射効果の作用機序の検討を行なったが,種々の問題点から十分な資料を得るまでには至らなかった. 以上,研究計画の後半部分に関して十分な研究成果が得られなかったが,直線偏光型近赤外線照射は適応症の選択基準が確立すれば有効な治療法となる可能性がある.したがって,照射効力の客観的評価と作用機序の考察を目指し,研究を継続,進展させていく必要がある.
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