研究概要 |
本研究では,アパタイト焼結体および高純度チタン製インプラントをウサギ脛骨に埋入し,埋入後早期からバイオインテグレーションおよびオッセオインテグレーション獲得に至るまでのプロセスを,我々が独自に開発した3次元骨構造観察システムを用いて解析した.従来のインプラント周囲骨の観察は,研磨標本を作製することによって2次元的に行っており,インプラント周囲骨組織の全体像を把握することは困難であった.さらに,このような方法では骨接触率等の定量化が困難であり,また,定量化を行ったとしても全体の一部分に過ぎず,データが研究者によって大きく異なるという問題点を抱えていた. 本観察システムでは、染色技法によりインプラント,骨,その他周囲組織に明瞭に分類できるためデジタル化が容易となった.このため,骨以外の周囲組織を取り除いた骨とインプラントの関係が3次元的に容易に観察できるだけではなく,インプラント-骨界面における接触率とインプラント周囲骨体積率についての定量化が可能となった. このシステムを用いてアパタイト,チタン,カルシウム注入チタンインプラントを比較したところ,アパタイトインプラントでは,埋入後2週から著明なロ-ト状の新生骨形成がみられ、埋入後4週でピークを迎えて骨接触率,骨体積率ともに最大値を示し,以後,減少していった.これに対し,チタンインプラントでは,経時的に増加する傾向を示し,本研究において最も長い観察期間である8週後に骨接触率60%と最も大きい値を示した.カルシウム注入チタンでは両者の中間的な傾向であった.このように各種材料間でインプラント埋入後の骨反応に大きな違いがあることが明らかとなった.
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