配分額 *注記 |
6,700千円 (直接経費: 6,700千円)
1998年度: 1,500千円 (直接経費: 1,500千円)
1997年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
1996年度: 3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
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研究概要 |
1) 臨床材科における浸潤像の免疫組織化学的検討 IV型コラーゲン,ラミニン,ヘパラン硫酸プロテオグリカンより構成される基底膜成分の連続性と浸潤様式との関連を免疫組織化学的に検討したところ,浸潤傾向の弱い症例では連続性のものが多く見られたのに対し,浸潤傾向が強くなるにつれ不連続や広範囲消失のものが増加し,特に4D型の症例ではいずれも広範囲消失例であった。またデスモソームの構成成分であるデスモグレインIを用いて細胞間接着性を検討したところ浸潤傾向が強くなるほど,細胞間接着性が低下することが明らかになり,特に4D型の陽性細胞率ではわずか0.5%であった。さらにウロキナーゼ型ブラスミノーゲンアクチペーター(uPA),マトリックスメタロプロテテーゼ(MMP)と浸潤組織像との関連を観察したところ,浸潤傾向が強いほど,uPAやMMPが多く発現することが観察された。このように,4C型と4D型で明らかな相違があるものが多く認められた。 2) 浸潤と転移の機序に関する実験的研究 in vitroでの細胞運動能実験において3型のOSC20,4C型のOSC19および4D型のHOC313の3種類の口腔癌細胞株を用いて,その自己運動能を金コロイド法を用いて検討したところ,4D型細胞株の運動能が他の細胞株に比べ有意に高かった.またゲルを用いたin vitro浸澗モデルでの研究ではOSC20とOSC19細胞では線維芽細胞の存在下でのみ原発巣に類似の癌浸潤像が形成され癌細胞と線維芽細胞の相互作用の必要性が示されたのに対し,HOC313では線維芽細胞が存在しなくても浸潤する強い浸種能が示され,臨床での4D側の強い浸潤性との相関性が示唆された。一方,ハムスター誘発舌癌における浸潤増殖像の検討では浸潤様式1から4C型まで観察されたが,4D型は認められなかった。さらにヌードマウス移植in vivo浸潤転移モデルによる検討では舌や口底にOSC19,OSC20細胞を生所性移植したところ,臨床に極めて類似の浸潤像が確実に形成されることを見いだし,本法が口腔癌の浸潤・転移モデルとして極めて有用であることが示唆された。現在,通常の方法では生着しない4D型細胞株の可移植化に向けて検討を行っている。 3) 浸潤増殖像と腫瘍血管構築像に関する検討 臨床材料の免疫組織所見に加え,ハムスター実験系およびヌードマウス実験系について腫瘍血管構築像を生体墨汁を用いて検索したところ,浸潤傾向が強いほど,腫瘍深部の血管密度は低く,細い傾向にあるということが示された。この結果より,腫瘍血管は人癌や実験誘発癌の発生・増殖および移植癌の生着・増殖には必須であるが,浸潤や転移には直接的には必要としないものと推察された。
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