研究概要 |
同所性移植法にて造腫瘍能および浸潤・転移能に相違のあるヒト口腔扁平上皮癌細胞株(本研究者樹立)において,増殖と転移を規定する遺伝子の解析を行った。 1.岡山大学病態遺伝学講座より,Aluのプライマーを譲与して戴き、プライマーの組み合わせ(10組)にて、Inter-Alu long PCR法によるGenomic Figer Print法(ヒトゲノムDNA中に存在するAlu配列を利用したPCR法)を行った。高転移性クローンには消失し,低転移性クローンおよび造腫瘍能のないクローンに発現しているバンドを2本認めたので,シークエンスおよびクローニングを行っている。また各クローンのmRNAを用い,240種類のプライマーセットにてDifferential Display法を行い,発現の異なる遺伝子を認めたが,ノーザンブロット法による確認がまだ不十分なため,現在検討中である。 2.2次元電気泳動およびウェスタンブロット法にて,高転移性クローンはサイトケラチン(CKs)13,14,16のタンパクを発現していなかったが,転移転性クローンでは発現が見られ,CKs13,14,16の転移抑制能の可能性が示唆された。mRNAの発現はRT-PCR法にて,高転移性クローンではCKs14,16は認められなかったが,低転移性クローンでは認められた。CK13のmRNAはともに認められたが,定量的RT-PCR法およびシークエンスにて,配列の相違ではなくmRNAの量的発現の差によりタンパクの発現に相違があることがわかった。低転移性クローンよりCK13のcDNA(1565塩基),CK14のcDNA(1414塩基)を作製した。高転移性クローンにこれらのcDNAをトタンスフェクトし,in vivoおよびin vitroの性状を調べ,CKと転移抑制能との関係を検討中である。 3.FACS法(タンパクレベル)にてインテグリVLA-2,VLA-3の発現が高転移性クローンでは高く,転移・浸潤能との相関の可能性が示唆されたが,RT-PCR法にてmRNAの発現は低転移性クローン,高転移性クローン共に認められた。
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