研究概要 |
添加エピネフリン濃度の差がリドカインの浸潤麻酔効果に及ぼす影響について,ラット体性感覚誘発電位(SEP)の解析を用いて定量的に検討し,両薬の至適濃度について考察を加えた. 【方法】高野(旧姓 笹尾)の報告した方法(日麻学誌,1987,15(3),485-494.1988,16(1),10-22.)を用いて,ラットの切歯歯髄内へ電気刺激を与えることによって得られたSEPを刺激電極の反対側の側頭骨骨面より導出した.浸潤麻酔前後のSEP初期成分の頂点間振幅(lP1-N1l)の変化を経時的に測定し,統計的に検討した.局所麻酔薬は,2%リドカイン(2L),1/200,000酒石酸水素エピネフリン添加2%リドカイン(2L20),l/160,000エピネフリン添加2%リドカイン(2L16),l/80,000エピネフリン添加2%リドカイン(2L8),1/160,000エピネフリン(3L16),0.03IU/mlフェリプレシン添加3%プロピトカイン(PF)の6種類とした.浸潤麻酔は口蓋粘膜へ薬液50μlを傍骨膜注射した. 【結果】効果持続時間は,2L8>2L20>PF>2L16>3L16>2Lの順で長く,2L8群は120分でも有意差を示した.lP1-N1lの減少は,30分までほぼ3L16>2L8>2L,2L20,2L16,PFの順に大きかった.3L16は2L8に対してほぼ30分まで大きかったが,40分以後は有意差はなく,急速に回復した.2L,2L20,2L16,PFの4群間には各時点で有意差はなかった.lP1-N1lの最大の減少は各群とも8〜10分で得られ,2Lを1とした場合の最大効力比は,2L:2L20:2L16:2L8:3L16:PF=1:1:1:1.5:1.9:1.3であった. 【考察】エピネフリン濃度を低下させて2L8と同等かそれ以上の局所麻酔効果を得るためには,30分以内であれば3Ll6が最も有用であると考えられた.しかし,リドカイン濃度を増加することによる毒性については今後検討が必要でと考える.循環器疾患患者に好んで用いられているPFは,2L8よりも効力は劣ったが有意差はみられず,処置を選べば十分臨床的に有用と考えられた.
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