研究概要 |
当初実験系としてラット歯髄由来細胞の培養系を用いる予定であった、しかし各種刺激に対する反応性においてラットとヒト歯髄由来細胞は反応性において異なること,ヒト歯髄由来細胞の無血清培地での培養系も確立できたため,ヒト歯髄由来細胞を用いた培養系で実験を行った。 1.目的 歯髄の硬組織自己治癒反応である象牙質形成機序を解明するためヒト乳歯及び永久歯の培養歯髄細胞を用いて石灰化能に関する検討を行った。 2.方法 1)歯髄細胞採取 ヒト歯髄細胞より,初代培養を20%FBS含有αMEM培地を用いて37℃,5%CO2気相下で行った。得られた細胞を2〜8代継代したものを実験に供した。 2)培養 アスコルビン酸およびβグリセロリン酸ナトリウムを添加した血清非添加のαMEM培地で培養した。培養10日後にTGF-β,IGF-I,bFGFをそれぞれ1ng/ml〜0,001ng/mlと濃度をかえて添加し培養2日,7日後に測定を行った。 3)ALPase活性の測定 活性の測定にはBessey-lowry法を用いて行った。 4)石灰化物形成量の測定 石灰化物形成量の測定にはOCPC法を用いて行った。また,位相差顕微鏡下でノジュール形成を観察した。 3.結果および考察 ALPase活性はTGF-β,IGFIの添加により低濃度で上昇したが高濃度では抑制された。また,経時的には低濃度では2日群に比べ7日群の方が大きく活性が上昇していた。石灰化物形成量の測定ではいずれの群において明らかなノジュール形成は認められず,カルシウム量への影響もALPase活性と類似した傾向を示した。bFGFでは濃度変化による活性への影響が最も少なかった。 今回,石灰化物の形成は認められなかったが,ALPase活性では成長因子による調節の関与が示唆された。これらの成長因子は,生体内において歯髄細胞による石灰化組織形成の調節を行っている可能性が示された。
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