研究概要 |
新規超原子価ヨウ素試薬の開発と生物活性天然物の立体選択的合成への応用を目指して、ルイス酸活性型超原子価ヨウ素試薬phenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)-BF_3・Et_2OやPIFA-TMSOTfを用いて種々のフェノールエーテル類の分子内反応による各種生物活性天然物の必須部分構造の合成研究を行い、以下の成果を得た。1、PIFA-BF_3・Et_2Oによるフェノールカップリング反応によるヒガンバナアルカロイド類の基本骨格の収率の良い合成法の開発に成功するとともに、ビアリールカップリングによる多置換ビフェニル化合物の効果的な合成法を確率した。(J.Org.Chem.,1996;Chem.Commun.,1996)2、PIFA-TMSOTfを用いてアルキルアジド側鎖を有するフェノールエーテル類からキノンイミン類への短工程変換法を開発し、多くの海洋アルカロイド類の必須構造であるインドロキノンイミン類の合成にも応用可能であることを見出した。(Chem.Commun.,1996;J.Chem.Soc.,Perkin Trans.1,1996)3、PIFA-BF_3・Et_2Oとベンジルチオアルキル側鎖を有するフェノールエーテル類との反応により含硫黄複素環化合物類を高収率で得ることに成功した。(Chem.Commun.,1996)一方、強力な細胞毒性と特異な構造を有する含硫黄discorhabdin類の合成においては上記2、3とともにN,S-アセタール構造の構築が鍵となる。3の方法で合成したジヒドロベンゾチオフェン類の硫黄原子α-位のアジド化によるN,S-アセタール部分の構築を検討した。その結果、超原子価ヨウ素試薬PhI=O-TMSN_3を用いると従来法を用いた窒素官能基の導入反応で容易に芳香化する基質においても収率良くα-位アジド体が得られることが分かった(Chem.Commun.,1998)。現在、これらの知見に基づき、含硫黄discorhabdin類の1つmakaluvamine Fの不斉全合成研究を遂行中である。
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