研究概要 |
FGFは線維芽細胞をはじめとするさまざまな細胞に対して増殖活性をもつペプチド性増殖因子である。現在まで,FGFファミリーは17のメンバーからなることが明らかにされている。われわれは2種類のラットFGF,FGF-16とFGF-17,遺伝子を同定し,その構造と発現を明らかにした。 ラットFGF-16遺伝子はラット心臓cDNAライブラリーより,homology-based PCR法により同定した。その構造は207アミノ酸配列からなり,既知のFGFの内,FGF-9と最も相同性が高かった。FGF-16はそのN-末端に分泌シグナルがない。しかし,FGF-16を昆虫細胞で発現させると,FGF-16は細胞外に効率よく分泌された。FGF-16は成体では心臓に最も高発現していたが,胎児では,褐色脂肪細胞に一過性に高発現し,出生直前にその発現は急激に減少した。従って,FGF-16は胎児では,褐色脂肪細胞の増殖、分化において重要な役割を果たしていると期待される。 一方,ラットFGF-17遺伝子はラット胎児cDNAライブラリーより,同定された。その構造は216アミノ酸残基からなり,既知のFGFの内,FGF-8と最も相同性は高かった。FGF-17のN-末端に分泌ソグナルが存在する。実際に,FGF-17を昆虫細胞で発現させると,FGF-17は細胞外に効率よく分泌された。FGF-17は成体ではその発現は確認されなかったが,胎児ではisthmus,septumなどの限られた脳の領域に特異的に発現していた。従って,FGF-17は脳の形成に重要な役割を果たしているシグナル分子であると期待される。
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