研究概要 |
体重階級性のスポーツ選手の減量による意識の変化を調べる目的で、脳波の測定を用いた。ただし、1日のカロリー摂取量には個人差があり、また正確なカロリー計算も困難であるので、減量ではなく絶食を用いた。つまり、本研究では、24時間の絶食による安静時,運動中の意識の変化を脳波学的に調べることを目的とした。また、絶食による生理学的、心理学的変化についても調べた。 被検者は22〜27(23.4±2.07)歳の健康な男子学生5人であった。24時間の絶食(飲水は認められる)前後に、体重,体温,POMS,Mental work test,自転車エルゴメータ運動前安静時,運動中(50W,100W),運動後安静時の心拍数,血圧,呼吸数,RPE,酸素摂取量,脳波の測定を行った。脳波は、高速フーリエ変換によってパワースペクトルを求め、4〜8Hzまでのθ帯域,8〜13Hzまでのα帯域,13〜20Hzまでのβ帯域に3分し、各領域の割合をエネルギー百分率として表した。 24時間の絶食により有意な変化がみられたのは、以下の測定項目であった。体重は減少した(P<0.01)。POMSの疲労,混乱領域に減少傾向がみられた(ともにP<0.1)。Mental work test中の主観的に感じたstress levelに増加傾向がみられた(P<0.1)。運動中(100W)の心拍数(P<0.01)と呼吸数(P<0.05)が増加した。脳波についてみると、特に安静時に、α帯域の増加がみられた部位が多く、θ帯域の減少がみられた部位もあった。 α帯域の増加については、よりリラックスした状態であると考えられる。また、θ帯域が減少してα帯域が増加したことにより、θ帯域からα帯域への速波化がみられ、覚醒レベルが上がったことが示唆された。このような意識の変化は、スポーツ選手にとって悪いものではないであろう。
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