研究概要 |
ラットの骨格筋(ヒラメ筋:SOL,ヒフク筋:GAS.長指伸筋:EDL,足底筋:PLA)のサイズ,タンパク質レベルおよび臓器(副腎,胸腺,脾臓)のサイズに及ぼすグルココルチコイドホルモンの影響を明確にするため,合成グルココルチコイドの一つであるデキサメタゾン(Dexamethasone:DexM,投与量=0,0.02,0.05,0.2,1.0mg/kgBW/day,連続10日間)を用いて検討した。また,速筋線維(IIa型およびIIb型線維)の比率が高い筋(GAS)と遅筋線維(I型線維)の比率が高い筋(SOL)のタンパク質画分(Sarcoplasm:F-1,Myofibril:F-2,Stroma:F-3)に及ぼすDexMの影響を比較・検討した。さらに,DexMの影響が投与期間によっていかに変動するかを定量的にしらべた。 1.ラットの体重は,DexMの投与量にほぼ比例して減少した。 2.筋のサイズやタンパク質量は,GASやPLAではDexMの投与量の増加に伴って減少したが,EDLでは高い投与量(1.0mg/kgBW/day)のDexMでのみ減少した。これらの値は,SOLではDexMの影響をうけなかった。 3.GAS,PLAおよびEDLの筋のサイズやタンパク質量がDexM(1.0mg/kgBW/day)投与によって有意に減少したのは,投与後それぞれ2日,4日,6日であった。 4.GASとSOLのF-1,F-2およびF-3におけるタンパク質濃度は,DexM投与によって変化しなかった。 5.副腎,胸腺および脾臓のサイズはDexMの投与量の増加に伴って減少した。 以上より,グルココルチコイドは,生理レベルの投与量で速筋線維の比率が高いGASで筋のタンパク質レベルやサイズを有意に低下させるが、遅筋線維の比率が高いSOLでは影響しない。
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