研究概要 |
琉球海溝にもっとも近く,隆起速度の大きいことでしられる南西諸島の喜界島の新世サンゴ礁段丘の形成・離水過程とそれらの時期を再検討するための調査を行った.調査地点は島の北東部の志戸桶地区で,サンゴ礁段丘の地形調査およびボーリング調査,コアの層相の観察とそれらのウラン系列年代の測定を行った. 主な結論は下記の通りである.1:完新世段丘は4面(上位からI〜IV面)に分かれ,I面の高度は約10mである.2 : I面は砂礫または砕屑性の石灰岩からなり,サンゴ礁はほとんどみられない.II面は広いモートとその外側のクレストをもつ裾礁として形成された.III,IV面は狭く,礁斜面をきる狭い波食面で,一部には新期のサンゴ礁もみられる.3:最古の完新世サンゴ礁は9.9kaで当時の旧汀線から約800m離れた所にみられる.それ以降海面上昇に対応してサンゴ礁は上方へ成長したが,その成長は海面上昇には追いつかなかった.4:約7ka以降の海面停滞期にはサンゴ礁は外側に向かって成長した.5 : I面の離水期を示す資料は本地区では得られなかった.II,III面の離水期はそれぞれ53ka, 29kaでほぼ同じ間隔である.IV面は2.6kaより若いが決定できない.6:これらの間欠的離水は地震隆起によると思われる.6) 9.9ka以降の同時代線を描き,堆積構造を明らかにすることができた.II面の広いのは海進と関連した堆積構造を反映しており,その形成に小海退や小海進を考える必要はない.III,IV面の狭いのは礁斜面上という原地形に関連していて,面の規模は必ずしも海面停滞期の長短によるものではなく,堆積構造や原地形に大きく関係している.7:サンゴ礁段丘の世界的模式地の一つ,パプアニューギニアのヒュオン半島の完新世サンゴ礁段丘と,喜界島のそれとを比較して,共通点,相違点とその要因を考察した.
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