研究概要 |
本研究では,まず,実験対象となるソフトウェア開発過程を明らかにすることを目的として,(1)ソフトウェア開発プロセスのモデル化,および,ソフトウェア開発シミュレータの開発を行った.分析対象である開発プロセスをモデル化することで,収集するべきデータの種類やデータの分析方法が明確になり,モデルに基づくシミュレーション結果と実験による実測データとの比較が可能となった. 次に,(2)ソフトウェア工学実験支援システムの構築を行った.実験の多くは長時間にわたり,実験データの分析にはさらにその何倍もの時間を要するため,データを効率よく分析するための分析支援システムは必須である.構築した分析支援システムは,同時に収集した複数のデータを同期再生したり,膨大な実験データ中から特定のパターンが現れる部分を検索する機能を持つ.本システムを用いることにより,ソフトウェア開発の効率に影響する要因を発見できると期待される. 本研究では,(1)(2)の成果を踏まえ,ソフトウェア工学実験環境を用いた実験の第一歩として,特に(3)ソフトウェア開発における修正・保守プロセスを観察,分析する実験を行った.ソフトウェア開発において修正・保守プロセスは,特に大きなコストを要すると言われており,ソフトウェア開発全体の効率を向上させるためには,修正・保守プロセスの効率化は必須である。 平成8年から2年間にわたる研究の結果,作業の並行化や作業習熱を影響を考慮したソフトウェア開発プロセスモデルの構築,ソフトウェア開発実験における開発行動データの統合的表示方式の提案,ソフトウェア開発行動の記録映像を検索するシステムの試作,視線追跡装置を用いたデバッグプロセスの観察実験,等について一応の成果を上げることができた.特に,構築したソフトウェア工学実験環境が,ソフトウェア開発効率に影響する要因を分析するのに有効であることが確認できた.
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