研究概要 |
タンデムミラー中のプラズマに吸収されたエネルギーが外部に流出する経路を同定することが最終的な目的である.従来の研究から,プラグ・サーマルバリア部(P・B部)の電子サイクロトロン共鳴加熱のため入力されたパワーが,開放端磁力線沿いに輸送され装置壁で散逸する過程が顕著であるこが知られている.本課題研究では,このP・B部において,径方向への熱流計測も加えて,3次元的な熱流分布の描像を得ることを目的とする. 物理的な背景は次の通りである.電子に共鳴吸収されたエネルギーは,共鳴層を通る磁力線に沿った熱流と,共鳴層に沿って磁場を横切る熱流の2つの流れとなって流出すると想定される.前者は磁化された粒子の輸送に付随したものである.後者は波動との共鳴により誘起された電子の横方向ドリフト運動によるものである.両者を分離計測できるというのがミラー装置の特長である.熱流計測はこの2方向の輸送による壁温の上昇分布を多チャンネルの熱電対アレイと赤外線放射分布像撮影を通して行った.この結果次のような成果が得られた. (1)ほとんどのプラズマ実験において出会うような,赤外線カメラとは周囲温度が異なる環境に置かれた非黒体の温度計測においては,カメラの表示温度は正確でなく,熱流評価の大きな誤差の原因となる.この補正のため,赤外線放射温度計測の基礎から検討を加えて,表示温度から真の温度を導出するスキームを構築した.[Y.Kiwamoto et al.Rev.Sci.Instrum.に投稿中]この結果は一般的であり他の熱流計測実験においても見通しの良い適用が可能である. (2)径方向への熱流の主たる到達先がプラズマ境界に最も近接した内部コイル壁面にあることが判明した.今回の計測から径方向熱流の総量は沿磁場熱流の30%程度と評価されるが,コイル面内の熱流分布に敏感に依存するため,更に詳細で広範な計測に発展させる必要がある. (3)径方向の熱流の大きさは加熱パワーに強く依存し,蓄積エネルギーへの依存性は弱い.加熱パワーの中では電位形成に支配的なプラグ加熱パワーが熱流に与える影響が最も強い. (4)この熱流は磁場に沿って往復しつつ径方向にドリフトする粒子によって輸送されている可能性が高い. 以上の如く当初の目的をほぼ達成し,熱流の3次元構造の解析が実行段階に入った.
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