研究概要 |
現在,我が国では多種類の放射性廃棄物を同時に1種類のガラスに埋め込んで処理するガラス固化処理方式が考えられている。本研究では,廃棄物の種類に応じて最適な固化体を選び,個別に処理する方が望ましいと考えて,長半減期アクチニド元素および高レベル廃棄物の主要成分であるランタンド元素専用の最適な固化体を開発することを目的とする。結合エネルギーから見て熱力学的に一番安定なZrやTiを主成分とするペロブスカイト,パイロクロアおよび蛍石型構造の酸化物を選び固化体としての性能評価を行った。(1)X線回折を用いてCaTiO_3へのPu,U,Nd,Ceの固溶限を決定した。(2)La_2Zr_2O_7に,Nd,Ce,Y等を添加した試料のEXAFS解析と浸出実験を行った。またCaTiO_3にCe,U,Nd等を添加してEXAFS解析と浸出実験を行った。浸出率の大きさ,添加元素の種類,添加量の間の関係を明らかにするとともにEXAFSで求めた陽イオンと酸素原子の間の距離が大きくなる程,浸出率が増大することがわかった。従ってEXAFS解析によって長時間の浸出実験結果を予測できることがわかった。(3)添加物入りCaTiO_3の高温構造相転移温度と転移機構を高温X線回折と高温熱容量測定により明らかにした。(4)数10KeVのHeやXeイオン照射後の電子顕微鏡観察から、Al_2O_3やMgAl_2O_4よりも結晶の対称性の高いY_2O_3安定化ZrO_2は耐放射性が高く,非晶質化しないことがわかった。(5)無添加およびNd,Ce,U添加CaTiO_3の沸騰HCl中で30日後の浸出率は他の主要なセラミック固化体であるジルコニア,パイロクロア,シンロックおよびプルトニウム安定化燃料等とほぼ同等であり,ガラス固化体よりも,約1〜2桁低く,十分な化学的耐久性があることがわかった。
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