研究概要 |
1. 1次元基礎輸送方程式(d^2φ/dx^2-Rdφ/dx-Pφ+Q=0)の係数 R,Pが空間依存を有する場合で、かつ 外部ソース項Qが空間座標xの多項式か指数関数、叉は両者の混在式で表される場合に、4領域モデルを導入し、3つの内部境界で解の連続条件を課すことによって解析解を導出し、然る後に局所差分点でその解析解を満足するように対流項に対する差分式を決定することによって、係数の空間分布を考慮した新しい高次差分法(SDCLENSスキーム)を開発した。 2. この新しい差分法に対し、研究代表者が先に提案している特性多項式解析法に基づく数値振動解析を実施した結果、SDCLENSスキームの特性根は、内部ソース項Pの正負に拘らず全てのメッシュレイノルズ数に対し、実数かつ非負であり、従って安定な解を与えることが明かとなった。 3. 係数が強い空間依存性を有する輸送方程式に対する数値実験の結果、本研究で開発されたSDCLENS差分法は、数値振動を発生することなく、従来の高次精度差分法(QUICK差分法、LECUSSO差分法)と比べ顕著に良好な数値解を与えることが確認された。 4. 上記の新しい非局所解析解差分法を用いて、質量、運動量、エネルギー各保存方程式を離散化し、その離散化式に基づいてプログラミングを行い、2次元熱・流動解析プログラムを作成した。 5. 2次元ナビヤ・ストークス方程式に対し、キャビテイ上面に水平方向速度を与えたときのシア-フローの解析解との比較をとうして、本解析プログラムの有効性を確認した。 6. 非局所解析解法スキームによる熱流動解析プログラムを用いて、伝熱と流動現象が強く結合し、従来の差分法では不安定解を生じ易く、かつ流れの多次元性のため数値拡散が大きい高レイリー数のキャビテイ内自然対流問題に対する直接シミュレーションを実施し、流動、温度パターンの時間的空間的構造や層流から揺動流へのカオテックな遷移現象、速度揺らぎのエネルギーのスペクトル解析、レイノルズ応力等の統計解析を行った。特に速度揺らぎのエネルギーは大略1/fスペクトルを持つことが示された。これは強制対流のように十分発達した乱流の場合のコルモゴルフの(-5/3)乗則と異なり、自然対流では高波数成分が十分には発達しきれない為と思われる。
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