研究概要 |
海綿動物(88検体),腔腸動物(11検体)および原索動物(5検体)について3種のグリコシダーゼ(α-グルコシダーゼ,β-グルコシダーゼおよびβ-ガラクトシダーゼ)に対する阻害活性を調べたところ,約10パーセントの海綿動物に活性が認められたが,他の2種の動物には活性を示したものはなかった. まず,α-グルコシダーゼに対して顕著な活性を示した八丈島の未同定種海綿から活性成分の単離を試みた.脂溶性の活性物質として,C15の分岐脂肪酸を得たが,水溶性画分の活性物質を単離することはできなかった. 一方,alpa-グルコシダーゼに対して顕著な阻害活性を示した八丈島海綿Penares sp.から2種の活性物質を単離しそれらの構造解析を行った。ジクロロメタン層を90%メタノールに溶解後ヘキサンで脱脂し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー、逆相フラッシュクロマトグラフィー、遠心分配クロマトグラフィー、逆相HPLCおよびシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製しS6215-Aと仮称した化合物を4mg得た。本物質はFABマススペクトルおよびNMRデータなどから、C36H69NO11S2の分子量を持つものと推定した。1HNMRからは2本のメチル基、巨大なメチルシグナル、ケトンの隣のメチレン、ヘテロ原子に結合した炭素上の水素が5個などが判明した。ケトンの隣のメチレン、ヘテロ原子に結合した炭素上の水素が5個などの存在などが判明した。一方、13C NMRスペクトルからは、2本のカルボン酸あるいはアミド由来のシグナル、2本の酸素が結合したメチン、窒素で置換されたメチンおよびメチレン、○-メチルなどの存在がわかった。さらに、COSYおよびHOHAHAスペクトルを解析することから、ピペコリン酸メチルエステルが長鎖脂肪酸にアミド結合していることが明らかとなった。なお、NMRデータおよび分子式を考慮すると、長鎖脂肪酸上には分岐メチル基が1つと硫酸エステルが2つ存在する。
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