研究概要 |
ミトコンドリアタンパク質の大部分は,サイトゾルで前駆体として合成された後、ミトコンドリアの外膜と内膜上の「膜透過装置」によって,ミトコンドリアに選択的に取り込まれる。外膜の膜透過装置はTOM複合体,内膜の膜透過装置はTIM複合体とよばれる。外膜のTOM複合体は,ミトコンドリアタンパク質を厳密に認識する受容体としての機能,タンパク質を高次構造がほどけた状態で外膜を通過させるためのチャネルとしての機能,外膜タンパク質の選別と外膜への組込み能力を合わせ持つものと考えられる。内膜のTIM複合体は,マトリクスまたは内膜のタンパク質を認識する受容体としての機能,タンパク質を高次構造がほどけた状態で内膜を通過させるためのチャネルとしての機能,内膜タンパク質の選別と内膜への組込み能力を合わせ持つものと考えられる。 本研究では,外膜のTOM複合体と内膜のTIM複合体について,構成各タンパク質のトポロジー,構成各タンパク質と前駆体との相互作用を明らかにし,膜膜透過装置の機能における各タンパク質の役割の解明に迫ることを目指した。まず,外膜膜透過装置内でTom70/Tom37とTom20/Tom22/Tom40は異なるサブコンプレックス構造を作っていることを見出した。次に,外膜の受容体Tom70とTom20間の相互作用には,Tom20の膜貫通部位直後の正電荷に富んだセグメントが重要であること,Tom70上のTom20結合部位はプレ配列結合部位と重なっている可能性があることを見出した。さらに,Tom20のサイトゾルドメインについてNMRによる解析を行い,その立体構造とプレ配列結合部位を明らかにした。また,部位特異的光架橋反応により,膜透過中の前駆体と膜透過装置構成タンパク質との相互作用を解析することに成功した。
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