研究概要 |
1.ポリ(ADP-リボース)シンテターゼ(PARS)阻害剤の発見-溶媒ジメチルスルフォキシド(DMSO)強心剤ベスナリノン,蛋白質の熱分解物Trp-P-1とPhIPに弱〜中等度のPARS阻害作用を見出した。 2.癌細胞の分化におけるポリ(ADP-リボース)の役割の解析-テラトカルシノーマEC細胞にベスナリノンやPhIPを与えると、神経細胞などに効率よく分化誘導されることを見出した。また,EC細胞をレチノイン酸で分化させるとポリ(ADP-リボース)合成が一過性に亢進した後,著明に減少すること,これがPARSの自己修飾と限定分解によることを見出した。 3.生死プログラムにおけるPARSの役割の解明-白血病Tリンパ球を高レベルのRIに曝してアポトーシスを惹起させるときPARSがリン酸化され,次いでプロテアーゼ(キャスパーゼ-3)による急速な分解を受けること,この分解が本酵素の核局在化シグナルを破壊し,核からの逸脱を惹起することを見出した。また,リン酸化酵素としてDNA依存性プロテインキナーゼを同定した。 4.神経変性におけるポリ(ADP-リボース)変動の解析-アルツハイマー病アミロイドAβペプチドをC-12細胞に与えて変性死を惹起させると,濃度・時間依存性にPARSを促進あるいは抑制することを見出した。 5.脳虚血傷害に伴うポリ(ADP-リボース)反応の発見-ラット脳の血流の一部を短時間遮断すると,虚血領域でポリ(ADP-リボース)合成が著明に亢進し,その亢進域が次第に拡がる現象を見出した。この変動は,遅延神経細胞死過程とよく対応していた。 以上の研究から,PARSが細胞の基本的生存機能,特にDNA損傷後の生死決定において決定的な役割を果たすことが明らかとなった。
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