研究概要 |
岡山県南の児島湖は国内で最も富栄養化した湖のひとつであるが,この湖水の実地調査を行ったところ,それぞれの濃度は低いが,作物が栽培可能な必須多量要素を含んでいることが分かった.すでに行った研究において,必須多量要素が培養液中に濃度は低くても存在し,培養液が根圏にたえず供給される条件下にあれば,作物は正常に生育することを明らかにした.つまり,湖を巨大な培養液貯蔵タンクと想定し,富栄養化した湖水を濃度の低い培養液であるとしてこの研究を行った.実験は,湖岸に設置して湖水をポンプによって流下させる連続流動水耕装置による栽培可能種のスクリーニングと,湖面に浮遊させた栽培パネルを太陽電池を動力源として移動させる湖面回遊型栽培装置の開発を行った.本研究の主たる目的は,湖水(河川水)へ流失した資源(肥料養分)を再利用することであり,また,花卉類を栽培することで湖岸あるいは湖面の環境美化を行い,汚染された湖というマイナスイメージを緩和しようとするものである. 1. 作物の根域への水の流動速度の適範囲を明らかにするため,スプレイギクとレタスを用いて実験したところ,流速9cm/sec(移動速度として3.24Km/hour)以上であればよいことが分かった. 2. 栽培可能種のスクリーニング実験を2年間にわたって行った結果は次の4段階に分けられた.A(正常に生育):花壇用草花類4種,切り花類3種,野菜類1種.B(ほぼ正常):花壇用草花類3種,切り花類2種,野菜類2種.C(生育したが一部枯死):花壇用草花類2種,切り花類2種.D(生育せず枯死):花壇用切り花類7種,切り花類5種. 3. 上記の実験に使用した湖(河川)水を1週間ごとに分析調査を行った結果,各無機要素の平均濃度は次のようであった.NO_3-N:1.21,NH_4-N:0.12,P:0.60,K:13.25,Ca:24.15,Mg:10.82,Fe:0.48,Na:55.09各ppm.pHは平均7.48であった. 4. 湖面回遊型装置は発砲スチロール体を用いた幅1.2m,長さ3.1mの大きさのものであり,前後に1枚ずつ搭載した太陽電池パネルを動力源として直流型船外機によって推進させた.装置の両端部に障害物感知センサをとりつけて推進機を正逆回転するようにして,長水路を往復運転出来るようにした.この装置の中央部に設置した栽培用パネルによって、花壇用花卉類を栽培し「動く花壇」として実用化できた。
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