研究概要 |
全地球的な物質環境を考える時、浅い沿岸域から深い外洋域に向かって移動する粒子量とその実体を明らかにする必要がある。本研究では、日高舟状海盆/日本海溝海域を実験水域として浅海から深海へ向かって移動する粒子量をセジメントトラップで実測し、捕捉された粒子の化学成分を分析して物質の移動機構を明らかにすることを目的とした。 そして、以下の実験を行った。 1 日高舟状海盆/日本海溝域でのセジメントトラップ係留系の設置と揚収 (1)北緯41度28分、東経142度29分(水深1.4km)の750mと1200mに1996年6月に設置し、1997年6月に揚収した。 (2)北緯40度29分、東経144度31分(水深7.3km)の1200m,4200mおよび6700mに1996年6月に設置し、1997年7月に揚収した。 2 沈降粒子の化学分析:セジメントトラップに捕捉された粒子について (1)全粒子束,(2)オパール,(3)炭酸カルシウム,(4)有機物,(5)アルミニウム,(6)マンガン,(7)希土類元素を測定した。 (C)水温、塩分などの物理情報を得た。 得られた新しい知見のうち最も注目すべき点は次の2つである。 1 日本海溝域の1200m層(中層)を沈降する粒子には黄砂(アジア大陸起源)の寄与が大きかった。 2 4200m,6700m,層(深層)の粒子の約85%は、日本列島あるいは日本海溝西側斜面を起源としていた。 その他の結果を合わせて、総合的に考察し、「浅海から深海へ大量の粒子が大陸棚の斜面を沿って移動している」と言う結論を得て、本研究の目的の根幹を達成した。
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