研究概要 |
光学活性ホストとラセミ体のゲストを混合すると、後者の一方のエナンチオマーが分子移動を起こして、ホストに包接される。減圧蒸留によって包接されないエナンチオマーを分離したのち,温度を上げて蒸留すると,包接されていたエナンチオマーが得られる。このような全く新しい原理に基づく能率の良い蒸留光学分割法を開発できた。 まず,蒸留光学分割に供する優れた包接能と不斉認識能を有する新規ホスト化合物を数多く設計・開発した。たとえば,安価で大量に入手できる天然不斉源である酒石酸を用いて,新しい酒石酸ダイマーホストを各種設計した。これらのホストは従来のモノマーホストに比べて格段に包接能,不斉認識能に優れており,各種のアルコール類を能率良く蒸留光学分割できることがわかった。たとえば,モノマーホストでは分割できない2-ヘキサノールを2回の蒸留操作で100%光学純度で分割することができた。 又,このような蒸留分割が能率良く進行することは,固相で分子が動いていることを示しているが,この分子移動の様子をスペクトル測定によって追跡できることも明らかにした。キラル分子の移動の様子は固相CDスペクトル法によって追跡できることも判明した。
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